広告代理店への追加修正依頼、どこから見積もりを分ける?
広告代理店が追加修正を受けたとき、見積もりを分ける境目は、合意済みの成果物・業務内容・数量・適合条件が変わるかどうかです。「修正」という呼び名や変更箇所の小ささは判定基準になりません。まず代理店側の誤りを直す「誤り訂正」、次に当初から含めた「既定範囲内修正」、最後に成果物や作業を増やす「追加制作」の順で照合します。
追加制作なら、追加する内容、見積もりへの反映、変更後の納期を合意してから着手します。既定範囲内でも、依頼時点が遅く完了済み作業の差し替えが生じるなら、納期はそのままと決めつけず協議が必要です。難しいのは、短い文言変更のように見えても、掲載先や工程によって「何をやり直すか」が変わる点です。
そこで、依頼文だけで即答せず、合意済み範囲と工程への影響を同じ受付票で確認します。以下は、2026年9月21日時点で確認した公式資料から導いた運用上の提案であり、一律の法的要件を示すものではありません。
広告代理店の追加修正は、依頼の大きさより合意済み範囲で分ける
広告取引基本契約モデルは、個別契約書や注文書・注文請書に、依頼業務の件名と内容、数量、代金額、履行期などを記載する形を示しています。2026年9月21日時点で確認できるこの資料は契約のモデル案であり、すべての取引に一律に課される法的義務ではありません。受付時には、担当者の記憶に頼らず、案件ごとの合意記録を照合先にする考え方が実務の参考になります。
確認する対象を、依頼の文字数や見た目の小ささに限ると判定を誤ります。
- もともと合意した成果物と業務内容に含まれるか
- 合意した数量や展開先が増えるか
- 成果物の適合条件を満たすための訂正か
- すでに完了した作業の差し替えや破棄が生じるか
- 当初の履行期を保てるか
この照合によって、同じ「バナーを直してほしい」という依頼でも、代理店側の誤記の訂正、合意済みデザイン案の調整、別サイズの新規展開を別の扱いにできます。合意した対象との差分を特定し、その差分を見積もりの判定根拠にします。
3区分で判定する追加修正の判断表
次の表は、依頼受付をそろえるための運用上の提案で、契約条項そのものではありません。上から順に主な区分を決めた後、工程と納期への影響も併記します。
| 区分 | 判定条件 | 受付時に確かめるもの | 見積もり・納期の扱い |
|---|---|---|---|
| 誤り訂正 | 合意済みの内容や適合条件に対し、代理店側の成果物が適合していない | 元の指示、承認記録、該当箇所、正しい状態 | 追加制作と混同せず、訂正範囲と納期を確認する |
| 既定範囲内修正 | 成果物・数量を増やさず、案件開始時に含めた修正条件の内側にある | 対象成果物、修正条件、現在の版、依頼時点 | 原見積もり内かを確認し、履行期に影響する場合は納期を協議する |
| 追加制作 | 新しい成果物、展開先、数量、作業が加わる、または合意済み範囲を超える | 追加物、用途、必要作業、完了済み作業、差し替え対象 | 追加分を見積もりへ反映し、変更後の納期と合わせて合意してから着手する |
広告取引基本契約モデルでは、成果物が個別契約に適合しない場合の修補等を扱う条項例と、業務変更時の代金額を協議する条項例が分けて置かれています。具体的に契約不適合へ当たるかは、個別契約と事実関係によります。だからこそ、受付票でも「不適合を直すこと」と「合意した業務を増やすこと」を同じ追加修正欄へ押し込めません。
たとえば、承認済み原稿と異なる表記を代理店側が成果物へ入れたなら、まず誤り訂正の条件を確認します。正しく反映した後に訴求軸を変える依頼は、当初の修正条件に含まれるかを見ます。さらに別媒体向けの形式を新たに作るなら、既存成果物の微調整に見えても、成果物や作業の追加として扱う余地があります。各条件を一つずつ照合すると、区分の根拠を顧客へ具体的に説明できます。
依頼受付票に残す項目
受付票は、依頼を記録する欄と、代理店が判定する欄を分けます。顧客の依頼文を、そのまま「追加制作」と決める材料にしないためです。
| 欄 | 記録する内容 | 判断への使い方 |
|---|---|---|
| 依頼対象 | 成果物名、現在の版、該当箇所 | 何に対する変更かを固定する |
| 依頼内容 | 変更前と変更後、求める状態 | 誤りの訂正か、新しい要望かを照合する |
| 合意済み条件 | 業務内容、成果物、数量、修正として含めた範囲、履行期 | 既定範囲の内外を判定する |
| 依頼時の工程 | 未着手、作業中、確認中などの現在地 | 影響を受ける作業を特定する |
| 完了済み作業 | すでに作成・確認したもの | 手戻りの有無を確認する |
| 差し替え・破棄 | 使えなくなる成果物や作業 | 追加作業に加えて失われる作業も把握する |
| 判定 | 誤り訂正、既定範囲内修正、追加制作 | 区分と理由をセットで残す |
| 変更条件 | 見積もりへの反映、変更後の履行期 | 着手前に双方で確認する |
「軽微」「少し」「急ぎ」といった表現は依頼の希望として残せても、区分の根拠にはしません。合意済み条件、増える成果物や作業、手戻り、納期影響へ言い換えて初めて、見積もりとスケジュールを判断できます。
案件情報をチームで再利用できる形に整える考え方は、広告代理店のAI・DXを業務へ組み込む方法にもつながります。AIは依頼文の整理、合意条件との差分候補、確認事項の草案づくりを支援できますが、契約上の区分、見積もり、出稿・納品の最終判断は人が行います。
追加制作は見積もりと納期を一緒に変更する
追加制作と判定した後に、金額の連絡だけを送り、元の納期を据え置くと、変更の合意が片側だけになります。受付票の変更条件には、少なくとも追加する成果物・作業、見積もりへの反映、変更後の履行期を並べます。
2026年9月21日時点の広告取引基本契約モデルには、基本契約または個別契約を変える場合、両者で協議し、合意後に見積書の再交付、注文書・注文請書の再提出、または変更内容を書いた書面の取り交わしで変更契約を成立させる条項例があります。これもモデル案です。着手前に変更点を合意記録へ戻す運用の参考になります。
実務では、次の順に変更条件を固めます。
- 元の合意記録と依頼内容の差分を示す
- 追加する成果物・作業と、差し替え対象を示す
- 見積もりへの反映と変更後の履行期を示す
- 顧客の合意を記録する
- 合意した条件を制作担当へ渡して着手する
この順序なら、営業が受けた依頼と制作側が認識した作業のずれも見つけやすくなります。広告代理店の業務効率化を進める整理方法と組み合わせる場合も、受付票の入力場所と承認者を決め、チャット、メール、制作管理表へ判断根拠が分散しないようにします。
既定範囲内でも工程が戻るなら納期を再確認する
既定範囲内修正は、常に元の納期で対応できるという意味ではありません。依頼がどの工程で来たか、何が完了しているか、どの成果物を差し替えるかによって、同じ変更内容でも影響が変わるからです。
IPA掲載のソフトウェア開発見積り事例は、仕様変更見積もりで判断する項目の例として変更量と変更タイミングを挙げ、発生時期によって棄却する成果物の範囲が変わると説明しています。これは2026年9月21日時点で参照した情報システム開発の事例で、広告代理店契約に直接適用される法律や基準ではありません。ここでは、依頼内容、依頼時点、手戻りを併せて見るための参考に限って用います。
受付時には、追加された作業と、完了済み作業のうち再利用できないものを確認します。原稿の修正そのものが既定範囲でも、その後に進んだ展開作業や確認作業に差し替えが及ぶなら、その影響を受付票へ記録します。そのうえで、当初の履行期を維持できるかを制作担当と確かめ、難しければ顧客と納期を協議します。
定例会で変更条件を確認する案件なら、広告代理店の定例会資料を判断につなげる作り方のように、未決事項と決定事項を分けると、追加修正の合意待ちを通常の進行報告に埋もれさせずに済みます。
案件開始時に「含む修正」を具体化する
受付票が機能するには、照合先となる修正条件が必要です。案件開始時に「修正対応あり」とだけ書いても、何を成果物の適合に必要な訂正とし、どこまでを既定範囲へ含めるのか判断できません。
日本広告業協会の実務解説は、契約を、誰が何を行うか、役割の範囲、納期、費用などの共通認識を示す基本ルールと説明し、将来の可能性を検討する例として、追加修正をどこまで含めるかを挙げています。2026年9月1日付の同解説が挙げる項目は検討例であり、網羅的な必須項目一覧ではありません。
運用では、成果物ごとに次の条件を案件の個別記録へ置きます。
- どの成果物を修正対象とするか
- どの状態を成果物の適合条件とするか
- どの種類の変更を既定範囲へ含めるか
- 成果物や展開先が増えた場合にどう協議するか
- 修正依頼の時点で納期へ影響が出る場合にどう扱うか
これは追加料金を自動判定する規則ではありません。受付時に参照できる共通条件を作り、範囲外と判断した理由、納期を変える理由を、案件固有の事実に沿って説明するための準備です。
受付から着手までの判断を一枚に戻す
依頼を受けたら、元の個別条件を開き、成果物の適合条件に対する誤り訂正かを先に確認します。該当しなければ既定範囲内修正かを照合し、成果物・数量・作業が増えるなら追加制作として変更条件を作ります。どの区分でも、依頼時の工程、完了済み作業、差し替え・破棄、納期影響は省きません。
顧客への返答には、判定した区分、参照した合意済み条件、今回の差分、影響を受ける工程、見積もりと履行期の扱いを並べます。追加制作は変更条件への合意後に着手し、既定範囲内修正で履行期を保てない場合は納期を協議します。受付票と返答の項目をそろえることで、追加修正の理由と次の行動が営業、制作、顧客の間で追える状態になります。
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