生成AIで広告素材を作る前に確認したい著作権|制作・納品時のチェック項目
生成AIで広告素材を作るときは、「生成できるか」より先に「その素材を入力してよいか」「その出力を広告へ使ってよいか」を確認します。迷ったまま制作を進めないため、案件の入口に次の判断表を置きます。
生成ボタンを押す前に使う、四段階の判断表
| 段階 | 止めて確認すること | 確認できない場合 |
|---|---|---|
| 入力 | 素材の権利者、AI入力・加工の許諾、機密性 | 入力せず、許諾済み素材か文章による説明へ替える |
| 生成後 | 既存作品、ロゴ、人物、文章、音源との類似 | 採用を止め、権利担当や専門家へ確認する |
| 編集 | 人が選んだ理由、修正内容、使用素材、承認者 | 制作記録を補い、説明できる状態にしてから進む |
| 納品 | 利用媒体、期間、地域、改変、表示、責任分担 | 契約・発注条件を確定するまで公開しない |
「AIが生成したから侵害しない」「プロンプトを書いたから必ず自社の著作物になる」と一律には判断できません。個別の素材、生成過程、利用方法によって評価が変わります。AIは企画や構成の候補を作れますが、公開・出稿・納品前の確認は人が行います。本記事は一般的な実務上の確認項目であり、個別案件の法的判断は弁護士などの専門家へ相談してください。
制作前は、AIへ渡す素材の権利から確認する
自社が閲覧できる画像や動画でも、生成AIへの入力や加工まで許されているとは限りません。クライアントから預かったロゴ、タレント写真、過去広告、ストック素材、競合広告を、参考資料として気軽にアップロードしないでください。
| 入力候補 | 確認すること | 安全側の代替 |
|---|---|---|
| クライアント素材 | AI入力、加工、再利用が契約範囲に含まれるか | 許諾済み素材だけを専用フォルダへ分ける |
| ストック素材 | ライセンスがAI入力や派生制作を認めるか | 入力せず、構図を文章で説明する |
| 過去広告 | 出演者、撮影者、音源、制作会社との利用範囲 | 権利台帳で再利用可否を確認する |
| 競合広告・作品 | 複製や類似表現を求めていないか | 機能、対象、雰囲気を抽象化する |
| 顧客の声 | 公開許諾、個人情報、改変範囲 | 匿名化し、意味を変えずに承認を取る |
特定の作家名や作品名を指定して似せる依頼は、法的な論点だけでなく、クライアントのブランドや制作倫理にも影響します。「誰々風」という短い指示に頼らず、色、光、構図、時代、素材感、感情など必要な表現要素を言葉にします。
入力素材には、出典、権利者、許諾範囲、期限、案件名を付けます。確認できない素材は、納期が迫っていても生成AIへ入れない判断が必要です。
権利だけでなく、顧客名、未公開の商品情報、個人情報を外部サービスへ送ってよいかも別に確認します。生成AIで顧客との議事録を作る方法で示すように、用途を決める前に利用環境と入力範囲を確認してください。素材の利用許諾があっても、機密情報として外部入力が禁止されていれば使えません。
生成物は、既存表現との類似を人が確認する
AIサービスの利用規約で商用利用が認められていても、出力が第三者の権利を侵害しないと保証されるとは限りません。ツールとの契約上の利用条件と、生成物を広告へ使う際の権利確認は別の作業です。
2026年8月20日時点で、文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」は、AI利用者に対し、利用前の規約確認や、生成物を公開・販売するときの既存著作物との類似性確認など、リスクを下げる取組を整理しています(文化庁「AIと著作権について」)。
公開前には、画像検索や社内の過去素材検索を使い、主要な構図、キャラクター、ロゴ、文章、音源が特定の作品と似ていないかを目視します。検索で見つからないことは、非侵害の証明ではありません。類似が疑われる場合は採用を止め、法務や権利担当へ確認します。
コピーでは、固有のキャッチフレーズ、歌詞、長い引用、第三者の商品名に注意します。短い言葉なら常に問題がないとも限らず、商標や不正競争など著作権以外の論点もあります。
見出しや説明文をAIで作る場合は、権利確認に加えて、商材事実、リンク先、媒体ポリシーとの一致も確認します。確認の順序は広告文をAIで作成するときの品質管理で整理しています。
人の編集と判断を、制作記録へ残す
生成物に著作物性が認められるかは、人に創作意図があり、AIを道具として創作的な寄与をしたといえるかなど、具体的な過程を踏まえて判断されます。文化庁も、個別具体的な事案の判断は司法によると説明しています(文化庁「よくあるご質問」)。
制作記録には、企画意図、入力した指示、使用した許諾済み素材、生成日時、採用理由、人が行った選択と修正、最終承認者を残します。プロンプトの文字数が長いだけでは、創作的な寄与を説明できません。何を表現したくて、どの出力をなぜ選び、構成、色、文章、動きをどう直したかが分かる記録にします。
記録は権利を自動で発生させるものではありません。それでも、制作経緯、クライアントへの説明、差し替え判断、後日の問い合わせに対応しやすくなります。
誰が何を承認するかは、制作担当の経験だけに任せず、案件開始時に決めます。利用サービス、入力禁止情報、権利確認、公開前承認を一つの社内手順へまとめる際は、広告代理店の生成AI利用ルールも参考にしてください。
納品前は、権利・契約・表示を一枚で確認する
広告代理店が納品する場合、生成物を使えるかだけでなく、誰がどの範囲で使えるかを決めます。媒体、地域、期間、改変、二次利用、再納品、元データの扱いを契約と発注書で確認します。
| 納品前の確認 | 確かめる内容 |
|---|---|
| AIサービス | 商用利用、禁止用途、出力の扱い、補償、規約の確認日 |
| 素材 | ロゴ、画像、動画、音源、フォント、出演者の許諾範囲 |
| 生成物 | 類似確認、事実確認、ブランド・広告規制の確認 |
| 契約 | 利用媒体、期間、地域、改変、二次利用、責任分担 |
| 表示 | AI生成である旨の表示が契約・媒体・社内ルール上必要か |
| 記録 | 入力、出力、編集、承認、納品版を追跡できるか |
経済産業省は、ゲーム、アニメ、広告での利用ケースと法的留意点を含む「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」を公表しています(経済産業省「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」)。社内チェック表を作る際は、最新の公式資料と自社契約を参照してください。
Cotomuは、生成前の企画と確認欄をそろえる場面で使う
具体的には、ショート動画やSNS広告の制作を発注する前に、企画案と権利確認を同じ表へ置く場面です。SNS企画・運用のAI伴走支援では、過去投稿、反応データ、運用方針をもとに、次月テーマ、投稿目的、形式、公開順、クライアント確認用メモの下書きを整理します。
担当者は、使用可能と確認した商品情報、撮影素材、ブランドルール、NG表現を入力します。AIが企画と構成の候補を作り、素材欄が空いている案には「新規撮影」「権利確認」「使用しない」の判断を付けます。クライアントと制作担当が確認し、採用した企画だけを制作へ渡します。
Cotomuが素材の権利を自動判定したり、生成画像や動画の非侵害を保証したりするものではありません。権利が曖昧な素材をAIへ渡さず、人が確認できる企画書を先に作る使い方です。
企画案の生成だけを速くしても、確認が後工程に残れば制作全体は安定しません。確認欄と承認の流れまで業務へ組み込む必要があります。広告代理店のAI活用・DX入門では、生成AIを単発の作業短縮で終わらせず、データとチーム運用につなげる考え方を紹介しています。
問題が見つかったら、公開停止と証跡保全を優先する
出稿後に類似や無許諾素材を指摘された場合は、担当者だけで反論を決めず、対象媒体、掲載期間、配信量、素材の出所、制作記録を確認します。必要に応じて公開や配信を止め、証跡を保全し、クライアント、法務、権利担当へ連絡します。
生成履歴を削除したり、該当箇所だけを上書きしたりすると、事実確認が難しくなります。元の納品版、生成日時、指示、編集履歴、承認記録を保持し、差し替えの判断と連絡内容も残します。
再発防止では、担当者へ注意を促すだけで終えず、素材フォルダの権利表示、制作依頼書の必須欄、納品前の類似確認、承認者を見直します。
制作依頼書へ、権利確認の三欄を追加する
次に予定している広告素材の制作依頼書を開き、「AIへ入力してよい素材」「生成後に類似確認する対象」「納品前の最終承認者」の三欄を追加してください。
一つでも確認できない素材があれば、代替として新規撮影、許諾済み素材、文章だけの企画入力を選びます。採用案には、出典、編集者、承認日を残します。生成ボタンを押す前に権利の入口を整えることが、広告制作で著作権リスクを下げる最初の一歩です。
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